軟膏の種類と成分
ぼくのクリニックでは脱ステロイドの過程を効率よく、かつ安全にするため、普通の白色ワセリンから不純物をほぼ完全に取り除いた、イタリア製の化粧品グレイドのワセリンを軟膏基剤として使用しています。
1)MA軟膏 :MA(1)、MA(2)、MA(3)、MA(4)、MA(0)
MA(0)には、(0)が示すように、ステロイドはまったく入っていません。これが基本の軟膏です。ステロイドのランクダウンということで、例えば、デルモベートに白色ワセリンを混ぜて、徐々にステロイドの強さを薄めていくことがあります。その際、普通の白色ワセリンの代わりに、このMA(0)を使われると、はるかにスムーズに行きます。
また、ステロイドの入っていないMA(0)だけでなく、患者さんご自身にわざわざステロイド軟膏を薄めていく作業の手間をとらせないMA(2)、MA(3)、MA(4) という軟膏もあります。MA(1)は軟膏基材が100%ステロイドです。
MA(1) | ステロイド軟膏基材100%、ビタミンB1、B2、B12、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー | ||
MA(2) | ワセリン(化粧品グレイド)、ビタミンB1、B2、B12、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、ステロイド軟膏が重量比で1/2 | ||
MA(3) | ワセリン(化粧品グレイド)、ビタミンB1、B2、B12、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、ステロイド軟膏が重量比で1/3 | ||
MA(4) | ワセリン(化粧品グレイド)、ビタミンB1、B2、B12、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、ステロイド軟膏が重量比で1/4 | ||
MA(0) | ワセリン(化粧品グレイド)、ビタミンB1、B2、B12、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、(ステロイドはまったく入っていません) |
MA(1)~MA(4)に入っているステロイドは、それぞれ違います。その理由は、一種類のステロイドに対して、皮膚に慣れを生じさせないためです。
2)KO軟膏 :KO(2)、KO(4)、KO(0)
KO(2) | ステロイドが重量比で1/2、親水軟膏、グリセリン、数種類の植物オイル | ||
KO(4) | ステロイドが重量比で1/4、親水軟膏、グリセリン、数種類の植物オイル。 | ||
KO(0) | ステロイドは入っておりません、親水軟膏、グリセリン、数種類の植物オイル。 |
ステロイドの入っている量は、KO(2) > KO(4)で、KO(0)はステロイドなしです。MA系軟膏が強すぎる場合があり、大人の顔用にも使うこともあります。また、ニキビとアトピーが併発しているような状態にも使います。さらっとしていますから、夏場、汗で悪化するようなタイプの人にも適しています。脂漏性皮膚炎で痒みが強い場合にも、使ってもらうことがあります。柚子(ユズ)オイルが配合されていますので良い香りがします。
3) PS軟膏 :PS(1)、PS(3)、PS(0)
PS系の軟膏は、主に乾癬、掌蹠膿疱症、苔癬化して非常に硬くなった皮膚、あるいはMA系の軟膏に抵抗を示すアトピーの湿疹にも使います。
PS(1) | ステロイド軟膏基材100%、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、液状ラノリン | ||
PS(3) | ワセリン(化粧品グレイド)、ステロイド軟膏が重量比で1/3、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、液状ラノリン | ||
PS(0) | ワセリン(化粧品グレイド)、数種類の植物オイル、5種類のミネラルパウダー、液状ラノリン |
ステロイドの量は、PS(1)>PS(3)で、PS(0)はステロイドなしです。
PS系の軟膏には液状ラノリンを配合しています。ラノリンは羊の油です。「痒い」という字をよく見てください。「羊」に「疒」(ヤマイだれ)です。羊の病気とは、痒くなることなのでしょうか?昔の人の直感や観察眼は尋常ならざるものがあります。この羊の油であるラノリンは、人間の皮脂に近い成分で、皮膚への浸透性が高く、保湿力も非常に優れています。
4)MAS軟膏 :MAS(1)、MAS(0)
MAS(0)は結節性痒疹が改善されたあとのケアなどに使います。ステロイドは入っていません。
5)再発予防軟膏
6)WAS軟膏 :WAS(10)、WAS(0)
WAS(10) | MA(0)基材、アズノール、サリチル酸ワセリン、ステロイド軟膏が重量比で1/10 | ||
WAS(0) | MA(0)基材、アズノール、サリチル酸ワセリン |
7)AZ軟膏
8)FR軟膏 :FR(10)、FR(0)
MA(0)、KO(0) | 50g | 各2,600円 | |
MA(1)、PS(1)、MAS(1) | 50g | 各4,200円 | |
MA(2)~MA(4)、KO(2)、KO(4) | 50g | 各3,150円 | |
PS(3)、PS(0)、MAS(0) | 50g | 各3,150円 | |
WAS(10)、WAS(0) | 100g | 各5,400円 | |
再発予防軟膏、AZ軟膏、FR(10)、FR(0) | 50g | 各3,150円 |
軟膏の塗り方
- 軟膏を塗る前に、まず皮膚に十分な水分を含ませてください。普通の水でもかまいませんが、出来れば保湿力をプラスしたローション(牧瀬クリニックではビオオーガニックウォーターやリカバリービオウォーターを使用していただきます。)を肌につけて、手のひら全体で患部を包み込むように肌になじませてください。
- 軟膏を指先にとり、患部に点で置いていきます。
- 軟膏を軽くたたき込むように優しく広げてください。刷り込むようにして塗るのではなく、乗せるような感じで塗ってください。
強いステロイド軟膏から徐々に軽いステロイドへ
アトピーもこれと同じことで、炎症の激しいとき、つまりかゆみ、赤みが強いときは、まず強いステロイド軟膏を使い、いっきに炎症を抑え、それから徐々に軽いステロイド軟膏へと切り替える短期決戦でいくのです。
牧瀬クリニックの軟膏は、アトピーの場合、まずMA(2)あたりから使っていただくことが多いです。
しかし、特に膝の裏など、肥厚してしまった箇所にはMA(1)を塗って、油紙で密封することをすすめる場合があります。
結節性痒疹の場合はMAS(1)から、乾癬の場合はPS(1)から始めてもらうことがほとんどです。
どの軟膏から始めてよいかわからない場合は、皮膚疾患相談から写真を送ってください。
軟膏を塗る期間
- 軟膏を5日間、朝、晩、塗ってきれいになったとしても、さらに5日間塗る。
- 2週間朝、晩、塗って、きれいになれば、さらに2週間塗る。
つまり、きれいになるに要した日数だけ、さらに塗るということです。
なぜなら、表面はきれいになっていても、皮膚の深いところでは炎症が残っています。表面がきれいになったからといって軟膏を塗るのを止めると、すぐに痒くなり、また軟膏を塗ることになります。すると結果的には、ステロイド軟膏を多く使うことになってしまうのです。
ただし、皮膚の薄い顔は、赤み、痒みが治れば、すぐにステロイド軟膏の塗布を止めてください。その代わりに、保湿ローション(牧瀬クリニックではリカバリー・ビオ・ウォーターを使用していただきます。)などを塗ってください。
塗っても痒くて眠られないのであれば、それはその軟膏の強さ、塗る量や回数が不十分、そして軟膏の塗り方にも問題があるということも考えられます。そのような場合は、ためらわず抗ヒスタミン剤などを就寝前に服用してください。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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