リンパ球Th1細胞に対するTh2細胞優位

(4) Th1/Th2バランスの是正

しかし、このエストロゲンの大海にどっぷりとつかってしまった環境から、現実的には、ぼくたちは逃れることはできません。

南太平洋のタヒチかニューカレドニアに移住し、プラスチックの食器をすべて捨て、自分たちの手による無農薬栽培の食物を食べて生きなければいけません。よほどお金と時間のないかぎり不可能なことです。

将来的には地球を覆うこのメス化させる環境を正常なものへと変化させることは可能であり、また絶対にそうしなければいけません。しかし、すでにバランスが崩れてしまったリンパ球をもとにもどす手段を今、講じなければ、アトピーは治らないのです。

そこで、世界中の研究者がしのぎをけずって新しい治療法を探しています。その最先端が樹状細胞dendritic cell (DC)です。この細胞は未分化のT細胞を、種々の刺激により、Th1細胞やTh2細胞へと分化させるのに大きな役割を果たしているのです。

このTh1細胞あるいはTh2細胞への振り分け機能を解明すれば、アレルギーに対する根治療法が確立されるかもしれません。しかし、今のところまだだれもその偉業ともいえる発見を成し遂げてはいません。しばらくは他の手段に頼らざるをえないのです。

 オメガ-3不飽和脂肪酸

ここでもフラックスシードオイルやエゴマオイルなのです。なぜなら、アラキドン酸から代謝されてできるプロスタグ ランジンE2は、未分化のT細胞をTh2細胞に分化させる作用があるのです。このアラキドン酸カスケードと拮抗するのが、オメガ3系統の油なのです。そういう意味でも、フラックスシードオイルやエゴマオイルは、アレルギー疾患に非常に効果があります。これら二つのオイルは自然がぼくたちにくれた最高の癒しのサプリメント なのです。

 乳酸菌(ヨーグルト、ぬか漬け、キムチ)

重要なサプリメント5~6」にも書いていますが、乳酸菌の種類に注意してヨーグルトを選んでください。 また、乳酸菌の分類については専門家の間でも、乳酸菌とビフィズス菌を別に分類したり、あるいは乳酸菌の一種としてとりあげたりして、混乱があるようです。

しかし、いずれにせよビフィズス菌がメインになっているヨーグルトは、現在のところ避けたほうが無難です。
その理由は、ビフィズス菌は種類によっては、アトピー治療に重要なビオチンというビタミンを消費してしまうからです (ラベルに注意してください。「ビフィドバクテリウム」という文字はビフィズス菌を示します)。
そこで、乳酸桿菌「ラクトバチルス」系がすすめられます。ラクトバチルス・パラカゼイかラクトバチルス・アシドフィルスがいいでしょう。

スウェーデンのビョルグステン博士らによっても乳酸桿菌が腸内に多い子供はアレルギー疾患にかかりにくいことが報告されています。 グラム陽性菌である乳酸桿菌はTh1細胞を誘導し、Th1/Th2の比率を正常に戻してくれるのではないかということです。

また「ぬか漬け」や「キムチ」もいろいろな種類の乳酸菌を含んでいますが、特に乳酸桿菌が 多いのです。 したがって、アトピーには非常にいい食材なのです。最近、韓国では若い主婦たちがキムチを作らなくなったと言われています。

そして、韓国でもアトピーが急激に増えています。ひょっとすると、いや、けっこう、若い人たちのキムチ離れが、アトピー流行の原因の一つになっているのかもしれません。

 キノコ

キノコ類がTh1/Th2のバランスを是正してくれます。また、ササの葉エキス、フコイダン、キチン・キトサンなども効果があるようです。

これらに共通するのは、細胞壁に含まれ最含まれているβグルカンや硫酸化多糖類といった高分子多糖類です。これが免疫系を調節してくれるのです。

以前、キリンの子会社が販売していた「キリン細胞壁破砕アガリクス」が、発がん性ありということで、販売中止になったことがありました。それは熱水抽出が不十分でアガリチンという物質が分解されずに残っていたせいだといわれています。

漢方薬でキノコを処方する場合、時間をかけて煎じます。ですから安全なのです。

したがって、キノコの高価なサプリメントを購入することができなければ、スーパーで売られている安いシイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、キクラゲなどで自家製キノコスープをつくってください。

漢方と同じように、時間をかけてゆっくりと煮込まなければいけません。特に干しシイタケには豊富なビタミンDが含まれていますから、ダシにも積極的に使われるといいでしょう。

 梔子柏皮湯(ししはくひとう)

これは山梔子(さんしし:クチナシの皮)、黄柏(おうばく:キバチの皮)、それと甘草(かんぞう)を混ぜてつくった漢方薬です。この漢方薬はTh1/Th2のバランスを是正する作用をもっています。

しかし、Th1/Th2のバランスが正常であったり、逆にTh1が優位のアトピー患者さんが現実にはおられます。このような場合は、この漢方薬は無意味です。また、一ヶ月間服用して何ら改善のきざしがない場合は止めたほうが賢明です。

また、漢方薬は「証」という、漢方医学の面から見た体質によって、同じ症状でも使う薬が違ってきます。そして、この「証」を見極めるのがけっこう難しいのです。

したがって、かなり漢方医学に精通した医者に処方してもらうべきです。インターネットでも購入できますし、一ヶ月分が3000円前後と安いのですが、しろうと判断は禁物です。

また、医王湯とも呼ばれる補中益気湯(ほちゅうえっきとう:人参、朮、黄耆、当帰、陳皮、大棗、柴胡、甘草、升麻、 乾生姜)や、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう:人参、朮、茯苓、甘草、当帰、川芎、芍薬、地黄、黄耆、桂皮)は、よく 抗がん剤使用中の副作用軽減のために使われますが、Th1細胞も増加させます。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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