アトピーにはⅠ型とⅣ型のアレルギーが関与しているといわれています。しかし、ここでアレルギーの分類を解説してもほとんど意味はありません。
問題は、なぜ最近になって急にアトピーを筆頭に、喘息、花粉症といったアレルギー性疾患が増えてきたかということです。 ここ、せいぜい20年~30年の出来事です。ぼくが医学生だったころの皮膚科の教科書には、アトピー性皮膚炎の記載は、わずか数行しかありません。
またぼくが小学生のころなど、アトピーっ子など一人もおらず、ずるずると鼻水を垂らしながらも、子供たちはみんな元気に戸外を駆けずり回っていたものです。 こんなわずかな期間に、ぼくたちのDNAの変化による体質変化はおこりえません。
一般的にいわれているアレルギー体質というものは、ぼくたちの細胞膜に異変がおこったためにおきた現象なのです。
特に植物油に多く含まれるリノール酸から代謝されてできたアラキドン酸が、 細胞膜を構成しているリン脂質に過剰に蓄積し、悪影響を及ぼしているのが原因なのです。
したがって、その異変は、基本的な遺伝子レベルでおこっているのではないので、よほどのことがないかぎり、時間をかければ、もとに修復することができるのです。
つまり、非常に改善するということです。 過剰なリノール酸と消化しきれないタンパク質を取り除けば、いいからです。それに反してがんは遺伝子レベルで変化がおこっているので、いったん、発症してしまうと、食餌療法だけでは、難しいところがあります。
リノール酸はサフラワー油(べに花油)、サンフラワー油(ひまわり油)、大豆油、コーン油、コットンシード・オイル(綿実油)、 ゴマ油、落花生油、小麦胚芽油、月見草油、グレイプシード・オイルといった植物油に多く含まれる不飽和脂肪酸です。
このリノール酸がコレステロールを下げ健康にいいといわれ、大量に消費されるようになりました。 特に1960年代、つまり半世紀以上前、動物性脂肪のバターやラードをやめて、植物油やマーガリンにしようという‘リノール酸’神話が生まれたのです。
その神話は1991年に発表されたフィンランドの研究で、完全に崩れ去ったはずなのです。
しかし、今でもその神話が尾をひいているのか、アメリカ国立予防衛生研究所の脂質栄養学の専門家ウイリアム・ランズ教授によると、現代工業化先進国の人間のリノール酸摂取は、 必要量の10倍にもなっています。日本人の場合、多少それよりもましですが、日に2グラムで十分なところをその5倍はとっているのです。
また、日本人の動物性タンパク質の摂取量がこの50年間に急激に増え、それにつれてアラキドン酸の摂取量も増えているはずなのです。
たとえば、1955年には日に22.3グラムの動物性タンパク質の摂取量が、1979年には39.4グラム、2002年には45.9グラムと50年前に比べると、 2倍以上になっています。
ここで示されている動物性タンパク質がすべて魚由来のものであればさほど問題はないのですが、牛、豚、羊、鳥も含まれているはずで、その場合、 アラキドン酸の増加が深刻な結果をひきおこします。
特に最近は、魚より豚肉や牛肉のほうが安いので、そちらのほうの消費が大きくなっています。
では、リノール酸やアラキドン酸とはいったい何なのでしょうか?そして、それらがなぜ悪いのでしょうか?
しかし、その詳しい説明に入っていく前に、炎症とエイコサノイドについて解説しなければいけません。
少し専門的になりますので、面倒くさいという人は、
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