5. 善玉腸内細菌:ビオスリー:1g~3g/日
まず、腸は最大の免疫器官だということを認識してください。 小腸の内側には小さな毛のような絨毛とよばれる突起が密集していますが、その間隙にパッチワークのようにパエイル板という器官が点在します。
パイエル板はリンパ小節の集合体で、いわば免疫系をコントロールする一つの司令塔のような役割を果たしています。 また、小腸の上皮には腸管固有リンパ球が、上皮細胞5~6個につき1個ほど存在し、その数はすべての免疫系細胞の60%にのぼるといわれています。
その他、粘膜固有層の粘膜固有リンパ球、そしてこれらの組織の下に、クリプトパッチと呼ばれる未分化リンパ球が集積する小リンパ組織が最近日本人によって発見されました。 ここでは腸管独特のT細胞がつくられています。したがって、腸の働きを健全にたもつことは、アトピーの改善に非常に役立つのです。
また腸は第二の脳とよばれるくらい、脳と密接に関係があります。長さは日本人の大人の場合6~7メートルもあり、広げるとテニスコート1面分の面積があります。 そこに存在する神経細胞の数は1億個で、脳以外に散在する神経細胞の約50%は腸に集まっているのです。
つまり、脳は腸とともに、精神的ストレス、情緒、睡眠などを共同でコントロールしているわけです。
したがって、過度な精神的ストレス、情緒不安定などで悪化するアトピーには腸の働きを整えることは非常に大切なことなのです。
脳と腸の働きをここで詳述できませんが、ぼくが知っている顕著な例では、斜視ですら善玉腸内細菌で腸を整えるだけで完治したことがあるくらいです。
腸内細菌の種類は100以上あります。そのうち、特に乳酸桿菌の宮入菌がすすめられ、後述するビオチンと特に相性がいいということで、よく処方されます。 ぼくのクリニックでもかつてはよく処方したものです。しかし、最近は「ビオスリー」という整腸剤を処方しています。スリーが意味するように、3つの菌が配合されています。
腸は長いので、場所によって酸素の濃度が違い、住む細菌も違ってきます。 酸素がないと生きてきない細菌(偏性好気性菌)、酸素は必ずしも存在する必要がないが酸素が存在すれば発育が良好となる細菌(通性嫌気性菌)、 酸素があると生きていけない細菌(偏性嫌気性菌)。ビオスリーはこれら三つの細菌をうまく組み合わせて、腸内の細菌叢(フローラ)を整えてくれます。 フローラは人によって実にまちまちで、一つの細菌を補っただけでは、なかなかうまくいきません。
ビオスリーには有益な細菌とされているビフィズス菌を増やす作用もあります。それは、たいへんいいことなのですが、ビフィズス菌の中にはビオチンを餌にするものがいます。 もっとも、すべてのビフィズス菌がそうであるというわけではなく、数は限られています。しかし、まだ完全には解明されていないのが現状です。 したがって、ビオスリーによって増えるビフィズス菌がビオチンを万が一にも餌にするかもしれないということを念頭において、 この整腸剤といっしょにビオチンのサプリメントをかなり多い目にとってもらうことにしています。
後述するモリンガと一緒に摂れば、さらにいいでしょう。それとリンゴを日に一個は食べるようにしてください。 リンゴに含まれている植物繊維であるリンゴペクチンは腸内環境を整える働きが非常に強いのです。ケーキを食べるなら、リンゴを食べようということです。
また、ビオスリーを含め、他のどんなプロバイオティクスでも、腸の働きが良くなりすぎ、大腸で便の水分が吸収されすぎ、便が固くなり、かえって便秘がひどくなることがあります。 40人~50人に一人ほど、そういう方がおられます。そのときは、種類を変えて、根気よくご自分の腸内細菌のフローラに合ったプロバイオティクスを探すしかありません。 そして、必ずそうしてください。腸を整えるのは非常に大切ですから。そこで、次のような質問がよく来ます。
「自分に合ったプロバイオティクスを探すにあたって、ビオスリー以外に牧瀬先生から処方してもらえるものか、あるいは、おすすめのプロバイオティクスがあるでしょうか」。
それに対する回答は、下記です。
「ありません。今のところビオスリーがもっとも公約数的に無難で、しかも安価なプロバイオティクスですから、それを処方しています。しかし、それが、合わないとあれば、一つづつ、ご自分で試される以外にないかと思われます」
なお、夏でも、仙骨をカイロなどで温める工夫をして、体が冷えないようにしてください。便秘にも効果的なことがあります。熱めのシャワーで仙骨を30秒ほど温めるのも良いでしょう。体が冷えると、ホルモンバランスや睡眠にも悪影響がでて、ちょっとしたきっかけで、すべての調子がおかしくなるものです。「仙骨」は「尾てい骨」とは違いますので、Googleなどで位置を確認して下さい。(仙骨の上の皮膚には、「八髎穴(はちりょうけつ)」というお灸のつぼがあります)。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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