7. ビタミンB群

ビタミン B1、B2、B3、B5、B6、B12、葉酸、ビオチン、コリン、イノシトールといった一連のビタミンB類を、一つのカプセルにまとめて、 ビタミンB群のサプリメントとして市場に出回っています。糖尿病の治療には必須で、そのことについては、 糖尿病に述べていますが、こと、アトピーに関して、簡単に述べます。

ビタミンB1、ビタミンB5(パントテン酸)

この二つのビタミンBはビタミンCとともに副腎皮質の働きを活発にしてくれます。 ごぞんじのように、副腎皮質でコルチゾール(いわゆる一般的にステロイドホルモンといわれているものの一種)が産生されます。 このホルモンはアレルギーに著効を示すことはみなさんよく知っておられるはずです。 アトピー症状が急激に悪化したようなとき、止むを得ずプレドニンなどのステロイド剤を服用することがあります。 しかし、外から補うより、自分の副腎でできたステロイドホルモンのほうがずっと安全です。その産生と分泌をこの二つのビタミンBは促してくれるわけで、是非、補ってほしいものです。 ビタミンCといっしょにとれば相乗効果が期待できます。
またB5は、クエン酸回路やβ酸化といった人体で最も大切な代謝反応に必要な補酵素の重要な成分で、十分に補っておかねばなりません。 また体内の有害物質の解毒に非常に効果があります。あとで解毒の重要性については詳述しますので、そこも読んでください。
それと、アトピーによく併発するヘルペスに対して亜鉛と同様に効果的です。
今回、副腎機能を高めるために、ビタミンB5をビタミンB群から独立させて500mgと量を多くし、かつビタミンC(エスターC)と一緒に組み合わせ、セット3に入れました。

ビタミンB2、ビタミンB6

この二つはアトピー患者さんによく見られる顔の赤みをとってくれる作用があります。しかし、注射で補うほど大量に摂取しなければあまり効果がないのが現状です。
特に思春期の患者さんは顔に赤みがでると、それを深刻に悩むことがあります。第三者からみるとほとんど気にしなくてもいいような赤みでも、ご本人にとってはつらいようです。
しかし、アトピー性皮膚炎由来の顔の赤みにB2とB6の注射は健康保険がききませんので、現実的には不可能です。したがって、B2とB6をサプリメントから大量に摂ることになりますが、これがまた、どのくらいの量を摂れば効果があるのかというデータはありません。ですから、日に各々、200㎎ほど試されて様子を見てください。水溶性ですから、このくらいの量を摂ってもまず問題はありませんが、肝機能に異常がある人はお止めください。
人によってはまったく赤みが取れないこともありますが、三ヶ月は試みられるのも価値があるかもしれません。
顔の赤味にはシステインも効果的なことがありますので、日に1000mg~2000mgを試してみて下さい。
それと、リカバリー・ビオ・ウォーターリカバリー・ビオ・ウォーター・プラスも試してください。

B6は「5.乾燥肌」についてのところで述べたセラミドの生成にマンガンと共に必須です。 また、システインという、シミを取り除き、美白効果があるアミノ酸の生成にも必要なのです。
*ただし、授乳中の女性や、もうすぐ母親になる女性は、ビタミンB6は日に25mg以上摂ると、乳の出が悪くなることがあります。 めったにそういうことはないのですが、もし、ビタミンB6を摂取して乳が出にくくなった場合は、止めてください。B6は乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンの分泌を抑制しますから。 しかし、乳の出に何ら影響のない場合は、もちろん摂取していいです。

ビタミンB2はリボフラビンとも呼ばれ、甲状腺にも大切なビタミンで、不足すると皮膚炎や舌炎をおこします。 B2やB1は特に豚肉やモツに多く含まれていますが、アトピーの人はそういった肉類をひかえるべきなので、こういったB群が不足することがあります。 そのため、積極的にビタミンB群をサプリメントから補うことがすすめられます。

ビタミンB12

このビタミンは赤い色をしています。中心にコバルトをもつ錯体で、かなり分子量の大きいビタミンです。
もともと、悪性貧血に、動物のキモ(肝臓)を食べると効果があるということで研究されているうちに発見されたものです。 アトピー治療での役割は、特に一酸化窒素(NO)の非常に有効な消去作用です。
一酸化窒素はフリーラジカルの一種で、もし過剰に存在すると皮膚を初め、多くの器官に障害を与えます。また、炎症性メディエーターとして、アトピーの本態である炎症も悪化させます。
スーパーオキシド、ヒドロオキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素など、いわゆる活性酸素を消去するとうたうサプリメントは数多くでていますが、それだけでは十分ではないのです。 過剰な一酸化窒素も除去しなければならないのです。
最初の方で書いたように、ぼくのクリニックでは軟膏にも混ぜて使っています。さらに経口的にも摂取するべきなのです。
ただ、厚生労働省が定めている栄養所要量である日に2.4μg(マイクログラム)という量は、アトピー治療には絶望的に少ない量なのです。普通のビタミンB群には50μg含まれています。
アメリカのスーパーマーケットで、医師の処方箋なしに簡単に購入できるビタミンB12のサプリメント1錠には5000μgが入っているものもあります。 ぼくは、神経が疲れたときは、このサプリメントから5000μgのB12を摂っています。
また、医師など専門家からは、ビタミンB12の過剰摂取は、巨赤芽球性貧血の診断を誤らせるという反対意見をきくことがあります。 しかし、この巨赤芽球性貧血なる病気はまれなもので、ぼくは医師になってから40年近く、まだ1度もお目にかかったことがありません。 医学生のときの大学病院でもみなかったほどまれな病気です。 これほどまれな病気の診断を誤らせるという理由から、最近では小学生の2割ほどはかかるというアトピーの治療に、ビタミンB12の大量摂取を行わないというのは、 これ以上愚かなことはないでしょう。
それから、もしビタミンCを3グラム以上一度にとるときは、ビタミンB12と同時にとらないほうが無難です。ビタミンCによって、B12が破壊される恐れがあるからです。 3時間以上、離してとってください。

イノシトール:500mg~1000mg/日

イノシトールは 穀物の中に多く含まれるビタミン様物質です。 ビタミン様と書いたのは、体内でもわずかですが合成されるからです (ビタミンの厳密な定義は体内で合成されない物質をいいます)。しかし、ビタミンB群の一種だと考えていいでしょう。 穀物の中に含まれているフィチンから体内ではできてきます。 フィチン、フィチン酸(その一種であるIP6)、そしてイノシトールは実に様々な作用をもっています。
良く知られているのが、コレステロールの調整です。したがって脂肪肝の治療や予防。神経系ではパニック症候群や強迫性障害の改善。 糖尿病からくる神経障害の防止。 多嚢胞性卵巣症候群の治療。脱毛の回復などです。
こと皮膚に関しては、真皮に存在する真皮幹細胞との関係です。この真皮幹細胞は真皮の再生・修復力を高め、はりのある健康な皮膚をつくるのに重要な働きをしています。 真皮幹細胞は血管のまわりで安定しなければいけないのですが、そのためには成長因子(PDGF‐BB)が必要です。その成長因子の発現を促すのがイノシトールです。
また、抜け毛の防止にも、効果的に働きます。アトピー患者さんは頭皮のトラブルがかなり多いので、イノシトールを摂られるといいでしょう。
米ぬかに多く含まれていますから、米ぬかパックをご自分でつくられても良いでしょう。作り方は簡単ですから、Googleで検索してください。
摂取量は500mg~1000mg/日と書いていますが、精神科や心療内科系の病気には、その10倍以上、つまり10g以上が必要です。 もし、パニック障害、うつ病などが合併している場合、専門医と相談してください。また、糖尿病性の神経障害の防止には2000mg以上が望まれます。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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