この滲出液(浸出液)は、中程度以上のアトピー患者さんにときどき出てきます。これは体の中の毒素でありません。
正体は血管からもれて出てきた、血液成分のうち、水やタンパク質(グロブリン、アルブミン、フィブリノーゲン)などの血漿です。やや黄色みを帯びた中性の液体です。
炎症のために毛細血管が拡張し、血管の壁から、このような物質が漏れやすくなるのです。ですから、炎症がおさまるまで、「出し切ってしまう」ようなことはないのです。 人体の治療力によって、ふつうは自然に炎症はおさまり、やがて滲出液はとまりますが(これが出し切ったように見えるだけです)、アトピー患者さんの場合、けっこう長引き、かつ頻繁におこります。実生活に不便であるばかりでなく、不潔で、そこに黄色ブドウ球菌さえ過剰に繁殖する可能性があります。
ですから、すみやかに対処すべきものであり、ほうっておくべきものではありません。
下記のようにしてください。
まず、症状に応じたステロイド軟膏を塗る。
その上に、亜鉛華軟膏を重ね塗りする。そのさい、リント布などに、亜鉛華軟膏をヘラで塗っておくと、さらに良いです。そして、それがずり落ちないように、最後に包帯でまいておく。 また、細菌感染があるようであれば、抗生剤入りの軟膏(たとえば、ゲンタシン軟膏)を最初に塗って、その上に、ステロイド軟膏、そして、亜鉛華軟膏と、三重にしてください。
また、できれば、病院で抗生物質をもらい、数日、服用したほうが良いでしょう。たいていは1週間~10日で滲出液は止まります。止まると、すぐに亜鉛華軟膏の塗布は止めてください。亜鉛華軟膏の主成分である酸化亜鉛は皮膚の乾燥をもたらしますから。
(ぼくのクリニックでは、その乾燥をできるだけ防ぐために、亜鉛華軟膏にアズノールと数種類の植物オイルを混ぜた軟膏をつくって、患者さんにお分けしています。 「牧瀬クリニック独自の軟膏成分」のページの最後にあるAZ軟膏です)。
ここに書いているのは、かなり一般的な解説です。もちろん、これに該当しないケースもあるでしょう。必ず一度は皮膚科で相談してください。そうでなければ、危険です。