皮膚が異常に乾燥すると、痒みを伝達する知覚神経線維が真皮から表皮にまで侵入 し、余計に痒みを感じます。
そのため、掻いてしまい、炎症がおこり、さらに痒みがますという悪循環がおこります。ですから、乾燥はできるだけ早いうちに、改善しなければいけないのです。それには、先に述べたフィラグリン、コラーゲン、セラミドを十分に生産することが非常に大切なのです。
フィラグリン遺伝子に変異がある場合。プロトピックがフィラグリンmRNA発現を増加させますので、多少、効果があるかもしれません。しかし、プロトピックを大量に塗るのは問題です。したがって、クリームやローションで保湿につとめなければいけないということです。また、もしあなたがネコを飼っていると、フィラグリン遺伝子に異常があれば、アトピー性皮膚炎になりやすいという研究があります。ネコでなく、犬の場合は、そうでないようです。ネコ好きの人は注意してください。。
MMP-1遺伝子に変異がある場合。これはサプリメントや食事からコラーゲンを補うことで、少しは改善されます。しかし、ここでよくこういう反論がおこります、「コラーゲンのサプリメントや、食事(フカヒレや手羽先)からコラーゲンを摂ったところで、腸から吸収されるときには、アミノ酸に分解されてしまっているので、何の役にも立たない」。Wikipediaにすら、そういう記述があります。
しかし、この反論は机上の空論です。こういう反論をする人は、薬学関係か化学関係の人たちであって、医療の現場にいない人たちです。 実際に患者さんにコラーゲンのサプリメントを摂ってもらうと、確かに保湿効果があるのです。その理由は次のとおりだと推察されます。
コラーゲンをつくっているアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどですが、特にヒドロキシプロリンは普通の食材には含まれていません。 したがって、ヒドロオキシプロリンを多く含むコラーゲンのサプリメントや食材を摂ることは、体内でのコラーゲンの生産にも役に立つと考えられます。
しかし、コラーゲンを多く含んでいるからといって、アトピー患者さんがフカヒレや手羽先を積極的に食べることはすすめられません。 それは、あとで述べますが、それらに多く含まれる脂がよくないからです。
ですから、悪い脂を含まないで、かつ、コラーゲンの原料となるアミノ酸を多く含む、サプリメントがすすめられるのです。
また、最近、プロテオグリカンという糖タンパク質が腸管から吸収され、細胞外マトリックスでⅠ型コラーゲンを増やすことが分かり、優秀なサプリメントとしてすすめられます。 詳しくは重要なサプリメントのページの「プロテオグリカン」をお読みください。
極端なビタミンC不足や鉄不足はコラーゲンの生成を邪魔します。しかし、だからといって、過剰のビタミンCや鉄の摂取もアトピーには非常に悪いのです。 ビタミンCについては、あとで述べます。鉄は、鉄欠乏性貧血でないかぎり、積極的に摂るものではありません。ふつうの食事からで十分です。セラミド:これをふやす最良の方法は、『寝ることも大切なサプリメント』にも書いているように、よく眠ることなのです。特に成長ホルモンが分泌される午後10時ごろ~午前2時ごろには、寝ているべきなのです。
食物からも多少、セラミドは補えますが、しれたものです。生芋コンニャクにはセラミドが多く含まれていますから、それを100g食べれば1日の必要量(600μg)が摂取できるという、「日本こんにゃく協会」(冗談でなく実在します!)の宣伝のようなものがありますが、アトピー患者さんのひどい乾燥には、ちょっとやそっと生芋コンニャクを食べたからといって、多少は助けになるでしょうが、劇的に改善するようなことはありません。午後10時から、あるいはどんなに遅くとも12時までには床に着くことに、勝るものはないのです。
それと、セラミドの代謝図からおわかりのように、セリンとパルミトイルCoAからセラミドができますが、最初の段階で3- ケトスフィンガニができなければ話になりません。その生成にはビタミンB6とマンガンが絶対に必要なのです。この二つが必要かつ十分になければ何も生まれてこないです。
アミノ酸の一種であるセリンや、パルミトイルCoAの材料になるパルミチン酸という飽和脂肪酸は普通の食事をしていれば、不足はまずおこりません。そこで、ビタミンB6をサプリメントから日に50mg、マンガンを日に3mg補うことです。マンガンは、コップ1杯のパイナップル・ジュースに、ちょうど3mg含まれています。
またα-GPCというサプリメントもいいでしょう。これは、成人でも成長ホルモンの分泌を促しますから、それによって、セラミドが増えます。 眼精疲労にも効果があります。特に深夜までコンピュータを使う仕事に従事しているアトピー患者さんには、すすめられます。アトピー患者さんの皮膚には緑膿菌が多く、その緑膿菌がもっているセラミド分解酵素でセラミドを分解していることがあります。そういう場合、適切な抗生剤が必要です。しかし、この処方は、皮膚科専門医でもけっこうむつかしい。
ですから、まず午後10時か、遅くとも11時には床に着き(その分、朝は早くおきてもいい)、ビタミンB6を50mg、マンガン3mg、 そして仕事の都合で午後11時までには寝られない人は、できれば、α-GPCを摂るというのが現実的です。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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