最近はコレステロールや中性脂肪が目のかたきにされ、油はすべて悪いようにとらわれがちです。 しかし、コレステロールも中性脂肪も体にとってなくてはならないものであり、絶対に必要なのです。 また、エネルギー源としても重要です。そして、エイコサノイド の生産にも必須です。 体にいい油とは、オメガ3系の不飽和脂肪酸や、オメガ9系のオレイン酸を多く含むツバキオイルであり、それに短鎖脂肪酸を含む松の葉オイルのことです。 そして、体に悪い油とは、オメガ6系統の不飽和脂肪酸や、マーガリンなどに多く含まれるトランス型の飽和脂肪酸であり、牛肉や豚肉に多くふくまれるアラキドン酸などです。 しかし、すべてこれは比較の問題であり、どの油もすべて、それなりに必要であることはいうまでもありません。

2009年のハーバード公衆衛生大学院の発表によると、オメガ3系不飽和脂肪酸の不足により、毎年、7万2千~9万6千人の人たちが死亡しているということです。 この重要な不飽和脂肪酸を多く含んでいるのが、フラックスシードオイルであり魚油です。ただ、魚油は有害重金属で汚染されている危険性があり、私のクリニックでは使っていません。

フラックスシードオイルのオメガ3系不飽和脂肪酸の代表格はα-リノレン酸です。 この不飽和脂肪酸の最大の特徴は、最終的に良性のエイコサノイドに代謝され、抗炎症性、血管拡張、血小板凝集抑制、免疫力増強、がん抑制、アレルギー症状寛解など、非常に健康に役立つ作用を行うということです。
アメリカで心・血管系の病気がことのほか多いのは、オメガ3系不飽和脂肪酸とオメガ6系不飽和脂肪酸の比率が、前者が非常に低いせいで、 悪性のエイコサノイドが優位に生産されるせいだといわれています。 その比率は日本では1/3で、アメリカでは1/12。圧倒的にアメリカの方が少なく、その分、狭心症、心筋梗塞の発症率が3~4倍に高いのです。 つまり、「血液サラサラ化」には、オメガ3系不飽和脂肪酸を多く含むフラックスシードオイルは必須なのです。したがって、高血圧にも効きます。
炎症性の疾患、例えば、リウマチにもフラックスシードオイルの抗炎症作用は大切です。 その他、糸球体腎炎、前立腺炎、乾癬、潰瘍性大腸炎にも有効で、さまざまなエビデンスがそろっています。アレルギー反応と炎症が同時におこっているアトピー性皮膚炎には欠かすことができません。

また、不眠、うつといった精神的な症状の改善にも役立ちます。更年期障害や生理痛の緩和にも必須といえるほど、役立ちます。
ちょっとした花粉症くらいは、フラックスシードオイルだけで十分に改善します。喘息の治療にも使います。 フラックスシードオイルとマグネシウムを足せば、今、あなたが使っておられる吸入ステロイド薬を半分には減らすことは可能でしょう。 私のクリニックでは、ほとんどの症例に、フラックスシードオイルを基本的に処方します。

このオイルがフラックスシードオイルほど有名でないのが不思議な感じがするのですが、実にさまざまな効果があります。 まず、体内のグルタチオンの生成を促します。グルタチオンは抗酸化と解毒に重要な役割を果たします。 血小板の凝集もほどよく抑制してくれ、これも「血液サラサラ化」に役立つ油の一つなのです。ケルセチンの配糖体であるルチンも含まれており、血管保護の作用もあります。

分子量の小さいモノテルペンが含まれており、それは血液脳関門を通って脳に入っていけますから、神経・精神面でも有効な作用を及ぼします。 森林浴のフィトンチッドの成分の一つは、この松のテルペンです。これによるリラックス効果もあるのです。
松の葉オイルに含まれているピノレン酸には、コレシストキニン(CCK)とグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)という二つの消化管ホルモンの生成を促す作用があり、 この二つのホルモンの相乗作用により、食欲が抑えられます。 CCKは、食物を胃から腸に送りこむのを遅くし、GLP-1は腸から食物の吸収を遅くするため、この二つの相乗効果により、満腹感が得られるのです。

ツバキ種子オイル(略してツバキオイル)は髪の手入れにだけ使われているのではありません。高級料理店では、天ぷらなど揚げ物に使われているのです。
その理由は、発煙点が高く、熱にも強く、なかなか酸化されないため、食材がカラットと美味しく揚がるからなのです。

ツバキオイルの主成分はオレイン酸です。これは、炭素の二重結合が一か所しかない、オメガ9系の一価不飽和脂肪酸で、酸化されにくいのです。 これは、温かく、酸素の豊富な血液中を流れるときにも、他の不飽和脂肪酸と比べて安定しているという利点をもっています。
オレイン酸はLDL(悪玉コレステロール)を下げHDL(善玉コレステロール)上げたり、また降圧作用も有しています。 そのため、脳血管系や心血管系の病気の予防にも有効です。副腎白質ジストロフィーという特殊な病気の進行も遅くする作用もあります。 抗ウイルス作用も認められています。母乳の油のうち3分の1が、このオレイン酸であることみれば、いかに大切な油であることがお分かりだと思います。 また、ステロイドや免疫抑制剤を服用しているときは、その副作用を可能なかぎり少なくするために、この椿油をのまれたらいいでしょう。
オリーブオイルにもこのオレイン酸が多く含まれており、英語ではOleic acid で、これはOlive から由来しています。 しかし、ツバキオイルには、オリーブオイルよりも多く含有されています。 100g中のツバキオイルには85gのオレイン酸、100g中のオリーブオイルには70gのオレイン酸なのです。 外国人でこの事実を知っているのは、おそらく食用油の専門家しかいないでしょう。 しかも、そのツバキオイルの中でも、日本と朝鮮半島でしか育たない、Camellia japonica の種から取れるのが最も優れているのです。

なお、以上の三つの油を摂られるときは、特にアスピリンやそれと同じような作用をもつ血小板凝集抑制作用がある医薬品やサプリメントとの併用は、 医者か薬剤師と相談して摂ってください。

  月桃

 
 

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