アトピーの患者さんには時々合併します。とくに風呂上りに起こりやすく、「ボコボコとした」あるいは「ちょっと盛り上がった感じ」という表現で膨疹を説明する人が多いのです。
かゆみはけっこう強いのですが、たいてい、1~2時間、あるいはせいぜい翌朝には消えてしまっています。このタイプの蕁麻疹はコリン性蕁麻疹と呼ばれ、皮膚の抹消神経から放出されるアセチルコリンが関与しているとされています。
アセチルコリンが肥満細胞に直接に作用し、ヒスタミン、ロイコトリエンなどのかゆみを促す物質の放出を促すからだと、一般的には説明されます。
もっとも、いまだに正確なメカニズムははっきりしないのが現状です。蕁麻疹だとわかってしまえば気が楽になるのですが、わからない場合、アトピーが悪化したのかと急に不安になって来院される方がおられます。
このコリン性蕁麻疹には塩酸ヒドロキシジン(商品名:アタラックス)などが良く効きますが、毎日、風呂からでると必ず起こるので、何とかならないものだろうかと相談される方がおられます。
これに対する処方は、アトピーに対する処方と同じですが、特に多い目のビタミンB群(通常の3倍)とビタミンC(日に10グラムほど)が有効です。どこにどのように作用しているかよくわかりませんが、これで緩和される人はけっこうおられます。また、腸溶性ラクトフェリンも足されるといっそう良いでしょう。
それと、薬物ではアスピリンとペニシリンが蕁麻疹をよく引き起こします。慢性蕁麻疹の患者さんの2割~3割は、解熱・鎮痛薬で悪化します。また、ペニシリンの場合、最近はいろいろな食品に、ごくわずかに含まれていることが多く、ペニシリンによる蕁麻疹だと、なかなか気づけないのです。
細菌による感染症を防ぐために、たとえば鮎(アユ)の養殖の餌にもペニシリンを混ぜることがあります。それが、アユの体内に微量に残留します。その残留ペニシリンにアレルギー反応をおこし、蕁麻疹が発症するという図式です。
このような場合、患者さんは抗生物質としてペニシリンを摂っているつもりはないのに、見えないところで、ペニシリンを体内に入れているのです。 ですから、過去に抗生物質でアレルギーをおこした人は、こういう点にも注意してください。
食事に関する詳細な記録をとることです。できれば、調味料、香辛料なども記録すればいいでしょう。蕁麻疹をおこす引き金となる物質がみつかるかもしれません。
しかし、これで少しも改善しない場合は、体内のエストロゲン・ドミナンスによって引き起こされていることもあります。これに対処するには、「α-GPC、松の花粉、桑の葉」のサプリメントが助けになる可能性があります。男性の場合は、これらの組み合わせにジインドリルメタン(DIM)、女性の場合は、インドル-3-カルビノールを足されたらもっと良いでしょう。これらは、難しそうな名前ですが、すべてインターネットで購入できますから、ご自分でそろえられます。
しかし、それでも治らない、慢性の特発性蕁麻疹はかなり多く、蕁麻疹を主訴とする人たちの約5割りを占めます。この場合は、最近、健康保険が使えるようになりましたオマリズマブ(商品名ゾレア)を試してください。一種の生物製剤ですが、止むを得ません。現在のところ重篤な副作用の報告はありません。新しい薬品ですから、内科の先生はうといかもしれませんので、皮膚科の先生に相談してください。ただし、IgE値が最初から低い人(43IU/mL以下)の3割には効果がまったくないことがありますから、医師とよく相談してから摂ってください。
また、あなたが50才を過ぎてから、突然、理由不明の蕁麻疹が頻発するようになった場合、念のために癌検診などを受け、どこかに悪いものができ始めていないか調べてください。老人性皮膚掻痒症 のページも参考にしてください。
ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。
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