50才を過ぎた人が時々、しつこいかゆみで診察を受けに来られることがあります。
老人性皮膚掻痒症といった、病名というより症状名(老人の皮膚がかゆい症状といっているわけですから)をつけられていることがあります。

あるいは老人性のアトピーだといわれたという患者さんもおられます。いずれにせよ、原因がよくわからないので、適当な病名をつけておくべきだということなのです。

共通する特徴は、かゆみが異常に強いということと、ステロイド軟膏を使っても、なかなか改善しないことです。また、若いころから、喘息も、花粉症も、食物アレルギーも何もなく、いわゆるアトピー素因を疑わせるものがなかったことです。
家庭菜園やガーデンニングなどの趣味で農薬を使うこともなく、新居に引っ越したわけでもなく、これといったストレスがかかる事件もなく、要するに何も思い当たる原因がなく、突然に湿疹ができ始め、かゆくて仕方がないのです。
こういう症例は皮膚がん(菌状息肉腫)か、あるいはどこかにがんが発生していることを疑うべきです。あるいは数年後に発生するがんの前駆症状だととらえるべきなのです。まず、大学病院に行き、専門家に精査してもらってください。
それで、皮膚がんの可能性が否定されると、次は血液検査で各種の腫瘍マーカーをチェックし、PETなりCTで、ひょっとすると体のどこかで発生しているかもしれないがんも調べてもらってください。

それでも、何も悪性のものが見つからなければ、運がよかったのであり、本格的にがんが発生する前に、ライフスタイルを徹底的に改善してください。
特にタバコをやめ、肉食を避け、何らかの解毒療法をやり、月桃やβ-グルカンなどをとり、可能なかぎりストレス・フリーの生活に切り替えてください。

もうすでに体の中で、良からぬ異常がおこっているわけで、それが皮膚に危険信号としてでているのです。その良からぬこととは、免疫系の異常で、それは老人の場合がんにつながる可能性が高いのです。

狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血といった心・血管系の前駆症状として皮膚に湿疹がおこることはまずありません。糖尿病の場合は、湿疹でも水虫が多く、老人性皮膚掻痒症ではありません。
また、ヘルペスや水イボが出やすくなった場合も要注意です。免疫系の力が低くなり、そういうウイルス性の疾患が発生しやすくなるのです。

たとえ、がんとは何の関係もない老人性皮膚掻痒症や、単純に頻発するヘルペスであったとしても、ライフスタイルを健康的なものに変えて、何の損もありません。家族の方も注意してあげてください。

老人性掻痒症とは違いますが、老人性疣贅(ゆうぜい)、つまり中年以降にできる疣(イボ)があります。これが半年内に全身に多発し、かゆみを伴う場合は、Leser-Trelat(レーザー・トレラ)徴候と呼ばれます。

この場合、胃がん、膀胱がん、肺がんなど内臓の悪性腫瘍の合併が強く疑われます。しかし、これほど典型的な兆候でなくても、高齢者の異常なかゆみをともなう湿疹、あるいは多発するイボは、皮膚科医は悪性のものを常に念頭においておくべきです。

最近はあまりにも専門化が行き過ぎて、皮膚科と内科の連携がうまくいっておらず、どちらの医者も専門バカになりがちなのです。

老人性皮膚掻痒症で来院した男性患者お二人に、検尿してもらったところ、潜血反応があり、一人は膀胱がんの腫瘍マーカーであるBFPが異常値でした。精査をすすめたのですが、そのままになっています。

ここに書かれていることは、ドクター牧瀬が、延べ5万人以上の皮膚科領域の患者さんを、内科医の立場から診察した、つまり、多くの皮膚病は体の内部の問題が皮膚に現れたとみなして治療する根治方法です。
 しかし、ご自分の症状を正確に把握せず、ここに 書かれてあるサプリメントをとったり、勝手な治療法を行い、症状が悪化してもドクター牧瀬 はいっさい責任をとれません。

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