- 夜はどんなに遅くとも午後11時までには床に就いてください。理想は午後10時までです。その分、朝は早くおきてけっこうです。同じ8時間睡眠をと るのであれば、夜1時に寝て朝9時に起きるより、夜10時に寝て朝6時に起きる方が、健康のためには良いのです。(便秘でさえ、午後10時に就寝すると、治ったという人もいます)。
それは、主にホルモンの分泌の関係からです。ホルモンは数多くあり、それぞれが単独で働くのではなく、他のホルモンと調和しながら、ちょうどオーケ ストラの楽器が他の楽器と共に一つのシンフォニーを奏でるように、人体という壮大な音楽をコントロールしています。
特に成長ホルモン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンはがんに非常に深く関係しています。これらがきっちり分泌され十分に働くには眠るタイミングが重要です。成長ホルモンは、午後11時~午前3時ごろ、また、特に就寝後3時間後に分泌がピークに達します。それと、血糖値が高ければ分泌が鈍ります。したがって、理想は夕食を午後6時30分までに終わり、すぐに床には着かず、血糖値が下がる2~3時間以上あと、つまり9時か10時ごろには床に着くことです。成長ホルモンは子供の背たけをのばすだけでなく、80才になっても分泌され、多彩な働きをします。
その働きの一つとして、成長ホルモンは、甲状腺ホルモンのT4(テトラヨードサイロニン)からT3(トリヨードサイロニン)への変換を促進します。T3が、生理活性が強く、これがうまく生産されなければ代謝が遅くなり、免疫機能も落ちてきます。
副腎皮質ホルモンはおおまかに言うと、アルドステロン、コルチゾール、アンドロゲンになりますが、この中のコルチゾールとは抗ストレス作用があります。このホルモンは明け方から起床後の1時間以内に多く分泌されます。明け方とは、午前4時ごろからを意味します。つまり、夜更かしをして午前1時や2時ごろに就寝すると、このホルモンの分泌も悪くなるのです。
デンマークでの研究ですが、夜間勤務による乳がんの発生率を調べたところ、昼間勤務のみの乳がん発生率を1とした場合、夜間勤務(交代) で1.8倍、夜 間勤務のみで2.9倍です。したがって、デンマーク政府は夜間勤務のために乳がんが生じたことを公式に認め、労災としました。乳がんと前立腺がんは違いますが、どちらも性ホルモンに強く影響を受けるがんであることが共通しています。したがって、夜間勤務をすれば乳がんの発生率が高くなるのであれば、前立腺がんの発生率も高くなりそうです。
また、夜間勤務をするとメラトニンの分泌が5分の1に減りますので、抗酸化物質であるメラトニンの減少も悪く影響してきます。
しかし、仕事の関係から、とても午後10時までには床に着けないという人も大勢おられるはずです。止むを得ませんが、それでも午前0時までには就寝 し、その分、早起きをして、するべき仕事は朝になさることです。どんな病気も夜更かしすると、非常に治りが悪いのです。ましてや、午前2時以降に寝る人は、病気はまず治らないといっても、いい過ぎではないくらいです。なぜなら、古来、ヒトは日の出とともに目覚め、日没と共に安らぐようにプログラミングされているからです。そのリズムを変え、午前2時以降に就寝しても健康を保てるようにヒトが進化するには、あと数万年という時間がかかるでしょう。それに、早く就寝するのに、一銭も余分なお金はかかりません。これほど安価で重要な健康法はないのです。この基本をないがしろにすると、どんなに優秀なサプリメントを摂っても、効果は半減します